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アメリカ人が日本語で映画を語るブログ

映画の解釈と分析を綴ります。

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【映画】スタートレックBEYOND

古い世界 vs. 新しい世界

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まず伝えておきたいのは、トランプが当選して一週間後にスタートレック・ビヨンドを見てからこの文章を書いたということ。だから最近の出来事は今の僕の分析に影響を与えたと思う。それは大丈夫だけど。なぜなら僕の意見では、作家の意図は観客の印象ほど大切じゃないと思うから。ちなみにネタバレ注意。

 

この映画の分析を語る前に、僕のスタートレックとの経歴を伝えておきたい。子供の頃から、スタートレックのことはあまり気に入っていなかった。演技は下手で特殊効果とコスチュームはダサくて、アクションがなくて、つまらないと思っていた。でも実は僕はスタートレックはどういう話かよく分かっていなかった。日本に住んでいた時、友人はスタートレックのファンだったから一緒に2009年のスタートレックを観た。その後ちょっと気になって、友人の好きな1987年のテレビドラマ「新スタートレック」を観てみた。

 

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ほとんどの西洋の未来が舞台になっているSFは、暗黒郷物語でテクノロジーは有害無益であることが多い。たとえばターミネーター、マトリックス、ブレードランナー、マッドマックス、猿の惑星、マイノリティリポート、ハンガーゲームの全部は暗黒郷物語だ。最近のマーベルの映画にもテクノロジーは善より害を起こしているみたい。しかしスタートレックは理想郷物語だ。スタートレックの大前提は、もし人類がお互いに酷く扱い合うことをやめたらどうなる?人類は欲張り、差別、戦争などを止めてテクノロジーを使って団結して終わりのない知識の探求をする。宇宙を探検して、新しい宇宙の文明と知り合って、いつも知識を増やそうとする。スタートレックでは人類の目的はいつも得じゃなくて知。

 

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日本に住んでいる間に講師として子供と触れ合っていた大人の僕にとって、こういう人類と世界は永遠に段々良くなるという考えはかなり魅力的だった。トランプのアメリカに住んでいる現在の僕は、この魅力的な考えを必死に抱き続けようとしている。トランプの当選は世の末ではないと信じたい。今は山ほど変化のある時代とわかっている。例えば今ポケットに入っている装置は、他の宇宙にある機械を使って僕に道案内をしてくれる。その装置を使って、国際宇宙ステーションにいる宇宙飛行士とチャットもできる。近い未来、自動運転の車に乗ったり、ドローンがピザを届けてくれたりバーチャル・リアリティーの授業を受けたりするでしょう。間違いなく未来はやってきましたよ。なので人はパニックしている。田舎にいる鉱山労働者、農家、木こり、工場労働者、兵士たちは、そんなことを知らずにこの未来の社会を造った。それから、その人達は未来の社会に取り残されてしまいそう。

 

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それじゃあ、スタートレック・ビヨンドの話に戻ろう。悪役はクラルだ。僕たち観客は彼を初めて見る時に、彼は怖そうな宇宙人のモンスターに見えるけど、後で彼は宇宙人じゃなくてフランクリン宇宙艦船のバルタザール・エジソン大佐だと知る。かつてエジソンは兵士だった。戦艦の大佐として戦争に行って攻撃的で暴力的な宇宙人の宇宙軍と戦った。彼の住んでいた世界には成功は競争と争奪からきた。そんな辛い時代に人類は、「長寿と繁栄を」するためそんな価値観が必要だった。

 

一方、スタートレック・ビヨンドの英雄は兵士じゃない。エンタープライズ艦船の乗組員は、平和の探求をしている多様な人間と宇宙人だ。彼らには闘争は起きるけど常にではなく、例外的に起きるだけだ。カーク大佐の艦船では通常行動は科学と外交中心。カーク大佐の住んでいる世界はエジソンと違うから、彼にはエジソンの自然選択の哲学は野蛮的。カーク大佐の世界の価値観は共通する目的を目指す団結と協力。しかしカーク大佐は、エジソンの様な兵士のおかげでカーク大佐の世界が存在しているということを利口な人だ。もしエジソンみたいな人がいなかったら、人類はカーク大佐の目指す未来の社会を造る機会はなかった。

 

 

倫理は、時代によって決まっている。織田信長みたいな昔の英雄は、現代の倫理基準では邪悪な戦犯だ。でも、もし信長みたいな人がいなかったら、現代の平和と科学で有名な日本は存在していないでしょう。

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しかし、映画はエジソンに対する共感があるけど、彼は間違いなく悪役。自分が造った世界に捨てられた人は、どう考えても悲劇。それでも、僕たち観客は、エジソンの考え方を理解できても許すべきってことじゃない。エジソンは壊滅を通じて生き続けている。彼は文字通りに他人の命を盗んでいる。彼の望みは、人類が競争を通して、力虐殺を通して、戦争という古世界の価値観に戻ってということ。

 

それじゃあ、どうやってカーク大佐は平和な世界をエジソンから救うの?まずは、エジソンの奥底に隠れた思いやりの気持ちに働きかけて、心変わりをさせようとした。でも駄目だった。結局カーク大佐は、エジソンをいっぱい殴って宇宙に投げ出して殺した。僕の意見では、それは、この映画の一番大きいミスだったと思う。スタートレックは基本的に楽観的なはずだけど、この終わりはかなり悲観的。エジソンの心と価値観を変えるのは不可能なので、平和の新世界を守るためには彼を処分するしかない。

 

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この比喩を現実に置き換えるとどうなる?古い価値観の世界と、古い世界の人々を投げ捨てるべきってこと?古い世界の人々がいなくなるまでずっと戦うべきってこと?それとも、ベビーブーマーとその世代の価値観が年を取って死ぬまで待つべきってこと?少なくとも、この映画は古い世界の人々の心変わりは不可能と語っているみたい。

 

それは間違えだと思う。正直に言うと、この映画を造った人達はアクションっぽいクライマックスを入れたかっただけだと信じたい。人の意見と信念が変わらないという考えは、明らかに間違っている。一つの実例を挙げよう。たった8年前に米国の過半数の人は、同性結婚を許すべきじゃないと思っていた。オバマもヒラリーも、結婚の事は男対女だけにするべきと言っていた。もし同性結婚に賛成していると言ったら、人気がなくなるというのが常識という状況だった。でも、たった1年前に、米最高裁判所が、全国で同性結婚は合法であると決めたときには、調査によると米国人の過半数は同性結婚を支持していた。たった7年間で、大勢の人が考えを変えて、古い世界の価値観を捨てて新世界の価値観を抱いた。人の意見と信念は変わるよ。

 

外国人排斥、女性嫌悪、暴力、差別、白人優越主義等のトランプのアメリカが持つ古い世界の価値観が、実は段々消えていると僕は信じている。でも僕たち未来の人々は、そんな古い世界がより早く消えてほしいなら、古い世界の人を投げ捨てるべきじゃないと思う。それよりできるだけ古い世界の人々の心変わりを励まして、それからエンタープライズに乗って一緒に未来へ向かえばいいと思う。

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